お知らせ
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20年ぶりに神戸を訪れることになった。私たち夫婦にとって、神戸は新婚旅行の思い出が詰まった街。あのとき泊まった北野の洋館、坂道の途中で買ったカフェオレ、港の夜景とともに飲んだグラスワイン……。そんなすべてをもう一度、確かめたくなったのだ。
今回は、記念日でもあり、少し贅沢な時間を過ごそうと、宿泊は北野のブティックホテルを予約した。神戸駅からタクシーで10分ほど。異国情緒ただよう北野坂を登っていくと、どこかヨーロッパの街角を歩いているような錯覚に陥る。午後の陽が傾きかけた時間帯、通りにはカップルや観光客がカメラを手に散策している姿がちらほら見える。
ホテルに荷物を置いたあと、向かったのは「VINSEMBLE(ヴァンサンブル)」というワインバー。旅好きの友人から「神戸でワインを飲むなら絶対にここ」と聞いていた店だ。場所は北野の中心から少し外れた静かな通り沿い。古い洋館のような外観で、看板も控えめ。だが、その扉の奥には別世界が広がっていた。
店内に入ると、まず迎えてくれるのは上質なワインの香りと、柔らかな照明。ウッドとアイアンを組み合わせたインテリアは、和の要素を取り入れながらも洗練されていて、落ち着いた大人の空間が広がっている。カウンター席の奥には、ワインセラーがガラス越しに見え、その豊富なボトルの数に思わず息を呑んだ。
オーナーソムリエさんが、にこやかに声をかけてくれる。「よろしければ、お好みをお伺いして、今日のお料理に合わせたペアリングを提案いたしましょうか?」。それがこの店の醍醐味だという。コース料理とワインのマリアージュ。その響きだけで、旅の高揚感は最高潮に達した。
お魚料理には、鮎のカイエット(豚の網脂?で巻いてる)に新生姜のソース。夏らしい一皿で、合わせたのはバターの香り?がするしっかりとした白ワイン。
メインは、フォアグラと神戸牛のロッシーニ風。濃厚なトリュフソースが口の中で広がり、それに合わせた深い赤ワインとの相性に思わずうなる。まるで、料理とワインが会話しているような感覚。
「料理とワイン、それぞれが主役であり、脇役にもなれる。だから“アンサンブル=合奏”なんです」とソムリエさんが静かに語る。その言葉に、私たちはこの店名の意味を改めて感じた。ここは単なる“ワインバー”ではなく、五感で楽しむ“舞台”なのだ。
デザートに合わせてミード(ハチミツのお酒)を最後の一滴までゆっくり味わい、心地よい余韻に浸る。
食後、坂道を少し散歩した。夜風が涼しく、街灯の光が石畳を照らしている。異国のようで、でもどこか懐かしい神戸北野の風景。
「また来ようね」と夫がつぶやいた。私は黙ってうなずいた。そう、この旅は終わりではなく、きっと新しい思い出の始まりなのだ。
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🟣 和を感じるモダンフレンチ&隠れ家ワインバー
▶ VINSEMBLE(ヴァンサンブル)
https://www.kobe-vinsemble.com/vinsemble/
五感で楽しむ上質なひとときを、神戸・北野で。
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